ゼリア新薬の新入社員が受けた、意識改革セミナーに思うこと。
ゼリア新薬の新入社員が、新人研修の外部委託セミナーに参加後、統合失調症を発症し自殺した痛ましい事件が話題になっています。
この事件は、2013年に発生、2015年に労災認定されています。そして、今年の8月、ご両親がゼリア新薬と外部のセミナー会社を相手取り損害賠償の訴訟を起こしています。
この事件を聞いたとき、宮部みゆき原作の『ペテロの葬列』を思い出しました。
ペテロの葬列では、主人公の上司である編集長が、かつて会社から派遣された自己啓発セミナーで精神的に追い詰められ、自殺未遂を図ったと言う過去が描かれていました。
60年代から70年代、自己啓発セミナーが流行り、企業は社員をこぞって、そのような自己啓発セミナーに送り込みます。しかし、このセミナーは、個人の人格を徹底的に攻撃、人格を破壊するため、精神的に追い詰められる参加者が続出、自殺者まで出てしまい、社会問題化したとありました。
私が、驚いたのは、今でもこのような精神的に個人を追い込むセミナーに、企業が、自社の大切な社員を、送り込んでいる事実です。
一部報道には、軍隊式とありましたが、私は、軍隊式というのは少し違うと考えています。理由は、軍隊式は、規律を遵守するための訓練です。規律を乱した者に対してリーダーから罵声が飛ぶことはあっても、過去の思い出したくないような体験について責められることはありません。体力的には追い詰められますが、精神的に必要以上に追い詰めることはないからです。
セミナーがいまだ開催されているということは、企業からの根強い需要があるからだと思います。
では、その依頼企業は、どのような目的で、何の効果を期待しているのでしょうか。
そう考えると、会社にとって使いやすい人材の量産です。人格攻撃されたセミナーの効果は、専門家ではないので分かりませんが、目的は、会社に取って扱いやすい人材の量産しか思い浮かびません。
一説によると、監禁し、自由を奪い、恐怖で支配するのは、カルト教団の洗脳のプロセスの定石のようです。とすれば、泊まりで自由を奪い、徹底的に個人攻撃をして、恐怖で支配する。このセミナーってカルト教団の洗脳プロセスと何も変わらないではありませんか。
外部セミナーには、専門家が教える素晴らしいものも沢山あります。
本人のスキルアップを考えたら、ロジカルシンキングやネゴシエーションのトレーニングの方が何百倍も有益であると思います。
このような人格破壊をするようなセミナーに、何の免疫もない新入社員を送り込んでいる、人事部の罪は重大だと思います。そもそも、自社の新入社員のトレーニングです。自分たちでプログラムくらい作るべきではないでしょうか。
猛省を促すとともに、このようなセミナーへの業務命令での派遣が一日も早く無くなることを願ってやみません。