戦力外通告と言う話。
シアトルマリナーズのイチローが、球団の会長付きの特別補佐に就任したそうです。今シーズンは、試合には出場しないとの事ですので、体の良い戦力外通告なのだと思います。
外資では、会社都合による希望退職と、個人を狙い撃ちにしたリストラがあります。個人がターゲットのリストラには、必ずその原因となる理由があります。コンプライアンスや法律に反することは、一発でアウトですが、パフォーマンスの悪さや、勤務態度の悪さによる戦力外通告が最も多いケースです。
かつて勤務した会社に、A子と言う女性がいました。彼女のレポーティングマネージャは海の向こうにいるため、このA子、午前中は、ほとんど会社に出勤して来ません。午後、しかも15時を過ぎた頃、キラキラネイルに、くるくるの巻き髪で、大きなコロコロの付いたキャリーバッグを片手に出勤して来ます。出勤するや、英語や日本語でどこかへ電話を掛け始め、仕事してますの猛アピールを開始するのが常でした。
さすがに彼女と同じ部門のB氏が、これじゃあまずいだろうと言うことで、人事に掛け合ったことがあるのですが、その後、そのB氏、A子からあろうことかセクハラで訴えられる始末でした。
A子は、海の向こうのマネージャ氏とは、上手くやっている様で、人事からエスカレーションが上がっても、そのマネージャ氏が逆にA子を庇うので、誰もA子の勤務態度には文句は言えなくなっていました。
そんなある日のこと。新任のマネージャ氏が就任し、A子と海の向こうにいるマネージャ氏との間に入ります。
着任早々、人事からも同じ部門のB氏からもA子のあり得ない勤務態度と、酷い仕事ぶりを聞いた新任マネージャ氏。人事と相談して、A子に戦力外通告のリストラを仕掛けますが、これがまた大変でした。
日本では簡単に会社から人を辞めさせることは出来ません。
よく外資で実施されているリストラは、例え指名でも、表向きはあくまでも会社都合による希望退職です。
辞める気のない人間を辞めさせるには、まずは、PIP(業績改善プラン)を適用して、会社のルールに則り、少なくとも数ヶ月、パフォーマンスをチェックし、その上で判断したと言うプロセスが必要です。
新任マネージャと人事が結託して事を進めたにも関わらず、交渉は難航します。労働問題に強い弁護士を雇ったA子が応戦して来たのです。
その間もA子は会社に出勤して来ます。勤務態度を監視されているので、今度は朝から出勤する様になりました。
数ヶ月後。
ようやく退職の条件の折り合いが付いたA子は、割増退職金を手に退職して行きました。後で、彼女の元同僚から聞いた話によると、前職もパフォーマンスの悪さによるリストラで、やはり労働問題に強い弁護士を雇い、1年近くも会社と揉めた様でした。
因みに、退職条件として、辞めた理由を他言しない事と会社との間で、取り交わすことがあります。労働問題に強い弁護士であれば、漏れ無くこの文言を追加します。
そのおかげで、前職の人事の方も、勤務していた会社の人事もレファレンスがあっても決して彼女とのトラブルを口外することはありませんでした。
件のA子、風の便りに、新たに就いた職場で、今も働いている様です。パフォーマンスに関しては知る由もありませんが、、。