魚の取り方を教えなかったマネージャ氏の話。
老子の言葉に、
『ある人に魚を一匹与えれば、その人は一日食える。 魚の取り方を教えれば、その人は一生を通して食える。』
と言うのがあります。
かつての私の同僚にA氏と言う本部長がいました。
本部長がA氏になってから、部門のパフォーマンスが向上、社内的にも一目置かれるようになった立役者です。部門全体のパフォーマンスのみならず、傍目にはチームメンバーも、A氏の元で生き生きと仕事をしているように見えていました。
そんなある日のこと。A氏が競合他社へ転職してしまいます。どうやら、パフォーマンスの良いその会社に目をつけた競合から引き抜きにあったようです。
A氏が退職した後、後任はB氏。
A氏の作ったチームや仕事のやり方をそのまま引き継ぎます。
それから、数ヶ月。
最初は何事もなく、全て上手く回っていたのですが、次第にその部門の部員と他部門との軋轢が生じて来ます。
これまで、問題なく動いていたはずのプロセスに、問題が生じて来ます。
しかし、、部門メンバーは、自分たちのやり方はこれまで通りだと頑として譲りませんでした。
問題が発生していた頃、偶然にも外部のセミナーでA氏とバッタリ再会します。
今、発生している問題を説明したところ、A氏が驚きの発言をします。
『それは、自分に責任があると思う。一人一人が自分の頭で考え、行動するような指導を自分はしなかった。自分のマネージしやすいチームを作っちゃったんだよね。』
A氏は、部門のパフォーマンスを最大化するため、彼の思惑通り動く、自分の頭では考えないチームを作ったそうです。なので、司令塔のA氏なき後は、チームは機能不全に陥っていたのだと思います。
先の老子の言葉で言えば、魚を与えるだけ与えて、どうやったら魚を取ることができるようになるのかを教えなかったのだと思います。
部下は上司を選べません。
例え上司が、魚の取り方を教えてくれなくとも、自分のことは自分でなんとかするくらいの気持ちで、取り方を学ぶことを忘れてはならないと思います。なぜなら、いつその上司がいなくなるか分からないからです。